素直になれない夏の終わり


「忘れてない。わざと連絡しなかった。そしたらなっちゃん、どうするかなと思って」


へーと相槌を打って、美織は視線で続けるよう促す。
津田は少しだけ迷うように視線を動かした後、またチラッと夏歩の方を窺ってから口を開いた。


「……ずっと一緒にいたら、わからないこともあるかと思って。特になっちゃんは、素直じゃないから。少し離れてみた方が、気付くこともあるんじゃないかと」


それで?と美織が言うから、津田はまたチラッと夏歩を窺ってから続ける。


「それで……昨日は来なかった。連絡もしなかった。……一応ご飯は炊いておいて、いつも通りに来るような素振りを見せたりして、それで来なかったら、来ると思ってたところに連絡もなかったら、なっちゃんは……どうするかなって。二日ほどそうして、三日目には、明日には一度顔を見せようと思ってたんだ。なっちゃんの反応も見たかったし」

「それなのに予想外なことに、夏歩が風邪を引いて寝込んでしまったと」


コクっと頷いたのか、それともただ項垂れただけか、美織の言葉に津田は顔を下に向けた。


「……予想外だった。確かにそれは予想外だったけど、それより俺は、こんな時でもなっちゃんは俺を頼ってくれないんだなって。俺の顔が一番に浮かんでもいいくらいそばにいたはずなのに、それでも頼るのは俺じゃないんだなって。そしたらなんか……一気にどうしたらいいかわからなくなった」