この男は一体全体何を言っているのか。当たり前のような顔をして、何をすっとぼけたことを言っているのか。


「誰が、誰を好きだって?」


念の為、聞き間違いの可能性を考慮して、夏歩は聞き返す。

津田は特に不快そうな様子も見せずに、むしろ丁寧にゆっくりと夏歩の問いに答えた。


「なっちゃんが、俺のことを好きなんだよ」

「……初耳なんですけど」

「そう?俺はだいぶ前から知ってたけど」


そんなわけがないだろうと、夏歩は津田を睨む。
けれども津田は、睨まれたところで怯まない。むしろヘラっと笑って、夏歩に返答を求めた。


「それで、お返事は?“はい”だって言うのはわかってるけど、なっちゃんの口から聞きたい」


全く、何をどうすればそんなとんでもない勘違いが出来るのか、夏歩は津田を睨んだまま答える。


「津田くんは、とんでもない勘違いをしているようだから、今後の為に訂正しておく。私は、津田くんのことを好きじゃない。だから付き合わない」