夏歩の言葉に、津田は笑顔で頷く。


「とりあえず、歩きながら考えよう。はい、なっちゃん。回れー右!」

「は?あっ、ちょっ……!」


ガシッと夏歩の両肩に手を置いた津田は、そのままくるっと体を反転させる。

肩は未だ掴まれたままだから動ける範囲に限度があって、夏歩は顔だけ出来るだけ後ろに向けて「ちょっと!」と抗議の声を上げる。


「歩きながらって、どこ行く気よ!私、今帰ってきたばっかりなんですけど」


そうだね、おかえり。なんて言いながら津田が掴んだままの肩を押すから、必然的に夏歩の足は前に出る。


「シチューかロールキャベツか、どっちにするにしろ、買い物に行かなくちゃいけないんだよね。微妙に材料が足りない。あと、今日はティッシュが安い日なんだって。同僚が教えてくれた。それは是非ゲットしておきたい」


そう言えば、箱ティッシュの在庫が残り一つだった。確かに、安いというのならこの機会にゲットしておくべきだろう。


「それって、私も一緒に行かなくちゃダメなの?」


面倒くさいという気持ちを表情に乗せて訴えてみたのだが、津田は笑顔で頷いた。


「一緒に行きたいから。だから待ってたんだよ?」


そんなの知るか!とは、思っただけで声には出さなかった。