「なっちゃん。ねえ、なっちゃん」


ゆらゆらと、いやもっと激しくぐらぐらと、布団の上から体を左右に揺すられる。

うるっさい……と呟いてもぞもぞと布団の中に潜り込んでいくと、「あっ、こらなっちゃん」と揺する力が更に強くなった。

呼ぶ声もボリュームが上がって、最早ゆっくり眠ってもいられなくなったが、夏歩は頑として目を開けない。

何しろ、今日は休みなのだ。

せっかくのお休みくらい、心ゆくまで寝かせて欲しい。もっと言うと、自力で目覚めるまでは放っておいて欲しい。

でもそんな夏歩の気持ちは、本日も鍵を使って勝手に部屋に入り込み、安らかな眠りを強引に妨げようとしている津田には伝わらない。


「なっちゃん、なっちゃん!ほら、起きて。いいものがあるんだよ」


鬱陶しい……布団の上から体を激しく揺すられるのも、大声で何度も呼びかけられるのも、津田の言動全てが鬱陶しい。

津田が諦めるのを待つつもりでいたけれど、この男は諦めが悪いのだと思い出して、夏歩は渋々と布団から顔だけ覗かせた。

天井を背景にして津田の笑顔が見えて、とりあえず夏歩はその顔を寝起きの人相の悪さでもって睨みつける。