「あっ、それ……」


ん?と首を傾げた美織が取り出した袋を、夏歩は指差す。


「それってあの……!あれ、なんだっけ……えっと、ほらあの……なんか有名なサンドイッチのお店のやつだよね?」


袋の中央についているロゴを指差す夏歩に、美織は「ああ」と納得したように笑った。


「夏歩でも知ってるってことは、相当有名だと思っていいわね。名前は出てこないみたいだけど」

「……“夏歩でも”ってどういうこと」

「だって夏歩、流行りものには全然興味ないじゃない。未だに家にテレビも置いてないから、手に入れる情報も極端に少ないし」


まあ、それはそうなのだけれど。そんな夏歩もようやく、それではいけないと思いなおして、時々雑誌を買って読んだりはしている。

テレビを買えよという話なのだが、大きなものは買うのにはそこそこ勇気がいるもの。

サンドイッチのお店についても、先日読んだ雑誌にたまたま記事が載っていたので知っていたのだ。

それなのに名前を憶えていなかったのは、こちらの方にはまだ出店していないようだったので、斜め読みしたせい。