ピザもスパゲティも食べたあとでお腹はいっぱいだったけれど、それだけは津田とシェアすることなく夏歩が一人で食べきったほど。
ココアも、やはりお店で飲むものは家で飲むインスタントとは別物だった。
どこがどうとははっきり説明出来ないけれど、夏歩でもわかる違いは、シナモンが香ったこと。
「また行こうね」
うんと素直に返事をするのは津田相手にはどうにも無理なので、夏歩は何も答えなかった。
察しのいい津田のこと、そうでなくとも自分に都合のいいように物事を捉える節のある津田ならば、きっと言わずともわかるだろう。
しばらく並んで歩いたところで、夏歩は思い出したように隣を見る。隣と言うか、津田と自分との間にある距離を。
「近い、もっと離れて。て言うか、津田くんはどこまでついてくる気なの」
「もう暗いし、家まで送るよ。あっ、よかったらお茶でもって展開なら、喜んで上がらせてもらうけど」
「なるか!そんな展開」
心なし夏歩が歩調を早めると、津田も遅れずぴったりついてくる。更に歩調を早めても、全く引き離せる気がしない。



