素直になれない夏の終わり


一段階トーンの下がった“いい加減にしろ”に、直接言われた津田のみならず、間接的に言われた夏歩も、ビクッと肩が跳ねる。

そんな悶着があった末に会計を済ませて店を出ると、辺りは薄暗く、昼間に比べて風がすっかり冷たくなっていた。


「もう、なっちゃんってば頑固なんだから。見た?さっきの美織。すっごく怖かった」

「頑固なのは津田くんの方でしょ。初めから割り勘にしてたら、美織を怒らせることもなかった」


喧嘩腰、と言うほどお互い言葉に刺はないけれど、なんやかんやと言い合いながら、裏通りを抜けて表の通りに出る。

立ち並ぶ店の明かりや街灯のおかげで、そこは随分と明るかった。車のヘッドライトもあるから尚更に。


「それにしても、まさか美織がいるとは思わなかったな。おかげで予想外に長居しちゃった」

「……津田くん、美織がいること知らなかったの?その割には全然ビックリしてなかったよね」

「そう?俺的には結構ビックリだったよ」