素直になれない夏の終わり


お会計の時になって、今度は津田と夏歩の間にひと悶着あった。
なんてことはない、お会計は割り勘にするか津田が全額払うかで揉めたのだ。


「ねえ、夏歩。もういい加減諦めたら?奢ってくれるって言ってるんだから、奢ってもらったらいいじゃない」


レジを操作する美織は呆れ顔で夏歩を説得し


「そうですよ、北井さん。ここは、こいつに払わせておけばいいんです。本人が払いたいって言ってるんですから」


祐也まで、夏歩に財布をしまわせようとする。


「ほら、二人もこう言ってるし」

「絶対に嫌!津田くんに借りを作るとか凄く嫌。あとで倍で請求されそうだからほんと嫌」

「美織ー、なんとかしてー」


津田の助けを求める声に、美織は盛大にため息をつく。


「わかった。もうここは、津田が折れなさい」

「ええー」

「どう考えたって夏歩を諦めさせるより、あんたが折れた方が早いでしょ!あたし達はこれから後片付けとか掃除とか、祐也なんて明日の仕込みもしなくちゃいけないんだから、いい加減にしろ」