素直になれない夏の終わり


既に舌がヒリヒリしているけれど、夏歩は美織が新たに注いでくれた水を今度はゆっくりと飲んでから、ピザは一旦置いておいてスパゲティを取り分けた皿を引き寄せた。

フォークにくるりときし麺のようなパスタを巻きつけて、塊感の強いひき肉のミートソースを絡めたところで口に運ぶ。


「んん、美味しいね、これ!」

「でしょ?あたしはこれが一番好きなの。そのきし麺みたいな麺は、パッパルデッレって言う種類だそうよ。祐也は何度かイタリアに行ったことがあるらしくて、その時食べたミートソーススパゲティがそんな感じだったんですって」


わざわざ聞いてくれたらしい美織に「そうなんだ」と相槌を打ちながら、夏歩はまたスパゲティをフォークに巻きつける。

そこで思いついたように「あっ」と声を漏らすと、テーブルの脇に置いてあった粉チーズのボトルを手に取った。


「チーズかけたらもっと美味しい気がする」

「間違いないわね」


美織を話し相手に夏歩が楽しく食事を進めている間、津田と祐也は放置されるままに激しくじゃれあい続けていた。

それは先ほど同様、美織が「いい加減にしろ!」と止めに入るまで続いた。



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