素直になれない夏の終わり


なので気にする必要はないと美織は笑って、夏歩に早く食べるよう勧める。


「冷めるとチーズが固くなるわよ。あったかいうちが美味しいんだから」


美織の言う通り、耳に焦げ目のついた丸い生地にたっぷりのトマトソース、その上に更にトマトととろけたモッツァレラチーズ、そしてバジルの緑が彩を添えたピザは、熱々が美味しそうだ。

いただきます、と何気なく口にして、夏歩は早速ピザを手掴みでいく。

熱したトマトは甘味が際立っていて、バジルの爽やかさにチーズの塩気、そしてちょっぴり焦げたところの香ばしさが口の中に広がっていく。ついでに熱さも。


「ふあっつ!?」

「焼きたてだからね」


なんとか一口目を飲み込んだところで、夏歩はグラスを手に取って勢いよく水を飲んだ。
それを見て美織は、一旦立ち上がって奥に引っ込むと、ピッチャーを手にして戻ってくる。


「熱いうちが美味しいとは言ったけど、気をつけて食べないと。火傷したら味なんてわからなくなるわよ」

「うん……」