素直になれない夏の終わり


「どうぞ、北井さん。ほらよ」

「雑!?」


夏歩には丁寧に、津田にはぞんざいに、祐也はピザを取り分けた皿をテーブルに置く。

ちょっと祐也!と二人のじゃれあいが始まると、「全く……」とため息を零しながら、美織は空いている椅子を引き寄せて腰を下ろした。


「仕事、いいの?」

「ラストオーダーはもう終わったから、夏歩達が最後のお客なの。だからいいのよ。どうせシェフがあんな状態じゃあ仕事にならないしね」


“あんな”と言われた祐也をチラッと見てから、夏歩は美織に視線を戻す。


「……もしかして、ラストオーダーの時間融通してくれた?」


夏歩達が店を訪れた時間帯は、チェーン店でもない限り飲食店は休憩に入っている時間だった。

入った時はなんとも思わなかったが、美織が応対に出てくるのが遅かったのは、閉店準備をしていたからかもしれないと今更ながらに思う。


「全然。ラストオーダーが終了したのはほんの五分前だから。前はディナーもやってからもう少しラストオーダーも早かったんだけど、バイトの子がお休みしてからはランチだけの営業なのよ。だから、ラストオーダーも遅めにしてるの」