素直になれない夏の終わり


「本場のミートソーススパゲティってこんな感じなの?」

「さあ?あたしイタリアには行ったことないから。でも味は抜群に美味しいわよ」


確かに、とってもいい匂いはしている。
早速皿に取り分けていると、今度は祐也が皿を手にしてやって来た。

お待たせしました、とテーブルに置かれたのは、焼きたてでまだチーズがブクブクいっているマルゲリータ。

うわあ、美味しそう……と思わず声を漏らしたら、津田がまた拗ねたような視線を夏歩に向けた。

鬱陶しいので、もちろん無視。


「よかったら、切り分けましょうか?」

「あっ、お願い。私こういうのあんまり上手くなくて」


じゃあ失礼します、とピザカッターを手に取った祐也を、津田は恨みがましく睨みつける。

本当は、俺がやる!と言いたいところだったのだろうが、祐也の前では余裕のあるところを見せたいのか、何も言わずに耐えている。

恨みがましい視線だけは、我慢出来ていないけれど。