素直になれない夏の終わり


あっ、来る――この流れでそう来たら、続く言葉はもう夏歩も知っている。
だから返す言葉を準備して待ち構えていたら、目の前にゴトっと重たい音と共に皿が置かれた。


「もしかして、何か邪魔した?」


夏歩と津田、両者から一斉に注がれた視線に、料理を運んできた美織が首を傾げる。


「ううん、全然。むしろ凄くいいタイミング」


返す言葉を用意して待ち構えてはいても、聞かなくていいに越したことはない。

夏歩はホッとしたように笑い、反対に津田は悔しそうな表情を浮かべる。
けれどそんな津田も、裕也にするように美織に不満をぶつけたりはしない。

怒らせると怖くて、本気になったら誰も止められないのが美織という人で、祐也も津田も夏歩も、そこは高校からの付き合いでしっかりと心得ているからと言うのがその理由だ。


「お先に、ミートソーススパゲティね。ピザはもう少し時間かかるから。はいこれ、取り皿」


ありがとう、とお皿を受け取って、夏歩はスパゲティに視線を落とす。

そのミートソースは、夏歩が知っているものよりひき肉に塊感があってゴロゴロしており、パスタの方も食べ慣れた細いものではなく、きし麺のような平たい形をしていた。