夏歩がおずおずと問いかけると、美織は「ああー、いいのいいの」と放っておけとばかりに手を振る。
「あの二人はいつもああなの。喧嘩って言うよりじゃれあってるだけだから、気にしなくていいのよ。むしろ気にしてたらキリがないから、放っておくに限るの」
なるほど、と頷いた夏歩に「それでさっきの続きだけど」と美織が言う。
「津田が言ってた通り、ほんとはバイトの子がちゃんといるんだけど、その子がバイクで転んで足を骨折しちゃったらしくてね。復活するまでのピンチヒッターとして、元生徒会役員のメンバーで交代してお店を手伝おうってことになったのよ」
「へえ……凄いね、未だにそんな深い付き合いがあるなんて。そう言えば、美織が三年だった頃の生徒会は学校史上最も結束力が高かったって言われてたもんね」
それはもう、一種の伝説と言ってもいい。
結束力のみならず、活動力も会議の白熱ぶりも、生徒からの支持率や教師からの信頼度まで、全てが今までで一番だと言われていた。
「先生達が誇張して言ってただけでしょ」
美織は、恥ずかしそうに夏歩から視線を逸らす。



