素直になれない夏の終わり


「まず、一応もう一回言っておくけど、あたしは転職したわけじゃないからね」

「転職……して、ない」


そう、と頷いて美織は続ける。


「ここには、たまに手伝いに来てるのよ。従業員じゃなくて、言わばお手伝いさんなの。ボランティア活動って言ってもいいわね。なにせ報酬は、お金じゃなくて美味しい賄いで貰ってるから」

「……お手伝いで、賄い……?」

「そことそこだけだと意味がわからないでしょ。でもまあ、とりあえず転職したんじゃないってところがわかってもらえたらそれでいいわ」


美織が二度も言ってくれたので、それに関してはよくわかった。それを伝える為に、夏歩はこくこくと二度頷く。

美織が自分の知らないところで会社を辞めて飲食業に転職したのではないとわかって、安心した。


「お手伝いって、そんなに手が足りてないの?確かバイトの子もいたよね、高校生くらいの。そんなに繁盛してるようには見えないけど」