入口から一番遠い奥の席、ぼんやりしている夏歩をそこまで誘導した津田は、椅子を引いて夏歩を座らせ、それから自分も向かい側に腰を下ろす。
それを見ていたらしい美織が「まるで介護ね」と笑いながらやって来ると、津田は不満げに唇を尖らせた。
「そこは、エスコートって言ってよ」
どう見ても介護だったわよ、と美織は、不満げな津田に構うことなくテーブルの上に水の入ったグラスを二つとおしぼりを置く。
「そうそう、一応津田が来たことは伝えておいたわよ。どうせ暇なんだからあとで顔を出せとも言っておいた」
「それはどうも。何か言ってた?」
「何も言わなかったけど、物凄く嫌そうな顔はしてたわね」
へーと笑って答えた津田がグラスに手を伸ばしたところで、美織は夏歩に向き直る。
「さて、夏歩。諸々あとで説明するって言ったのをこれから説明するけど、いい?」
未だぼんやりしている夏歩を気遣ってのその問いに、一気にぼんやりが飛んでいって、夏歩は大きく頷いた。



