素直になれない夏の終わり


当の美織は、大して驚いた様子もない。


「ちょっと美織ー、俺には?」

「さっきいらっしゃいませって言ったでしょ」


津田もいたって普段通りで、この場で驚いているのは夏歩だけだった。


「……美織、何してるの?」


おずおずとした夏歩の問いかけに、美織は「何って、見てわからない?」と胸当てのついたエプロンを指差す。


「て、転職……?」


割りと本気な夏歩の問いに、美織は吹き出すようにして笑った。


「違うわよ。ああ、でもそう見えるか。まあ諸々あとで説明するから、とりあえず座ったら?今お水とおしぼり持ってくるから」


そう言って美織が一旦奥に引っ込むと、「どこ座ろっか」と津田が呆然と立ち尽くしている夏歩の背中を押す。


「やっぱりこういう時は奥かな、一番奥。じゃあはい、なっちゃん。……おーい、なっちゃん。ほら、座って」