素直になれない夏の終わり


道の先には二階建ての一軒家、けれど明らかに民家ではないとわかるのが、その塗装。なんとも目を引く、緑と白と赤の三色。

その色が何を示しているのかは、夏歩でも知っている。
でもたとえわからなくとも、その答えは大変わかりやすく看板に書いてあった。

看板というか、看板代わりのように玄関前に置かれたイーゼルの上の黒板に。


「……美味しい、イタリアン…………」

「それが店名だよ」


嘘をつくなと津田を睨んだら、「ほんとだって」と掴まれたままだった腕を軽く引かれた。
歩くように促すその動きに、引っ張られるようにして夏歩は足を前に出す。

建物が近くなると、よりその色の奇抜さが目に付いた。

裏通りにあるという立地条件の悪さをカバーしての塗装だと思えば、まあ目立つという点ではよく機能している。

ただ、ワンポイントでその三色が塗られているのではなく、建物全体がその色とくれば、異質と言うか異様というか、おそらく一見さんは怖くて入れない。

それに、店の見た目だけでなく店名も問題だ。