素直になれない夏の終わり


そんな寂しいこと言わないでさーと津田は、夏歩の腕を掴んで左に曲がる。


「っ!!だから、曲がる時は口で言えってさっき、も…………」


言ったでしょ、と続けるつもりが、それは声にならなかった。

ついさっきまで、建物の背中と駐車場しか見えなかったのに、津田に腕を取られて曲がった途端、夏歩の視界に思わず言葉を失ってしまうようなものが飛び込んできたのだ。

自然と、そこで足も止まった。

どうしたの?なっちゃん。と楽しそうに津田が笑っているのを見る限り、思わず言葉を失って、足も止まってしまうような“あれ”が、本日の目的地であるらしいとなんとなく夏歩にもわかった。

そもそもに、曲がった先にお店らしいものは他にない。


「……一応聞くけど、ほんとにこの道であってる?」


もちろん、と津田は頷いた。


「着くまでまだ時間がかかる……とか?」


もうすぐそこだよ、と津田が答える。
やはり目的地は目の前の“あれ”で間違いないらしいことが判明したので、夏歩は改めて眺めた。