素直になれない夏の終わり


曲がりきったところで、「もうすぐだよ」と津田は掴んでいた夏歩の手を離した。


「曲がるとこ教えるだけなら口で言えば済むでしょ!」


離された手をもう片方の手で守るように包んで、夏歩は津田を睨みつける。
もちろん津田は動じる様子もなく、いつも通りに笑って答えた。


「だってなっちゃん、凄い勢いでどんどん行っちゃうから。ああ、これは声かけても聞こえないやつだなって思って」

「それでもまずは声をかけてみるものでしょ!いきなり掴むな」

「許可取ったら、手繋いでもいいの?」

「そう言う意味じゃない!!」


先ほどとは打って変わって人の数が減った、と言うより人っ子一人いなくなったので、夏歩は遠慮なく声を荒らげる。


「そもそも、私達は手を繋いで歩くような関係じゃない!」

「俺は今すぐにでもそんな関係になってもいいんだけどね。そうだ、この機会にどう?」


ヘラっと笑って差し出された手は、当然のように無視した。


「どうもなにもない。これまで通り、これから先も私達がそんな関係になることはない!」