素直になれない夏の終わり


「なんでもいいから、もっと離れて歩いて」

「あんまり離れるとはぐれちゃうかもよ。俺がいないと、お店の場所わからないでしょ?」

「ならはぐれた時の為に今教えて」

「はぐれる気満々の人には教えません」


はぐれると言うか、撒く気ではいたので、夏歩はムスっと不機嫌さを表情に乗せる。

どうせ撒いたところで行き着く先は同じなのだが、一緒に歩かなくていいというだけでだいぶ違う。

結局その目論見は阻止されたので、ムスっとしたまま津田と並んで歩いていると、不意に手を掴まれた。

夏歩がビクッと肩を跳ねさせて顔を上げると、津田が可笑しそうに笑って「こっちだよ」と掴んだ手を引く。


「ちょっ……!」

「お店ね、一本裏にあるんだ」


そう言って津田が曲がった道は、今まで歩いていた道と様相が違う、完全なる裏道だった。

先程までは歩道と車道が段差をつけてしっかりと分けられていたのが、曲がった先はその境界が白線のみで、それも所々が薄くなったり消えかかったりしている。