「なっちゃんとデートなんて、なんか感慨深いな。ついにここまで来たのか。長かったなあ、ここまでの道のり」

「デートじゃない。あと、妙に含みのある言い方はやめて」

「ええー、何も含んでないよ。勘ぐりすぎだよ」


全く信用ならない津田の言葉は無視して、夏歩は黙々と歩いていく。

ゲームセンターやカラオケボックス、アパレルショップに雑貨屋、ファミリーレストランやカフェなどが並ぶ通りは、休日だからかそこそこ人の数が多い。

おかげで津田と離れて歩きたくとも、それが叶わないのが夏歩としては悔しい。

時折すれ違うカップルが、同じデザインで色違いの服を着ていたり、いかにもデートです!と言った気合の入った格好をしていたりすると、なおさらに離れて歩きたかった。

なにせ本日の夏歩の服装も、周りからはデートの為に気合を入れてきたと思われても仕方ないようなワンピースだ。

確かに上から被るだけなので着替えは楽だったが、なぜ家を出る前に、その格好で津田の隣を歩くとどうなるのかに思い至らなかったのか。

後悔しても遅いけれど後悔せずにはいられないし、家を出てからずっと上機嫌な津田からは、確信犯的な気配さえ漂っている。