「お昼は、外食にしよう。いいところに連れて行ってあげる」
訝しげに、と言うかほとんど睨むようにして津田を見上げていた夏歩は「……今から?」と若干面倒くさそうに零した。
外食は嫌いではないが、突然だと支度をするのが面倒で気分が乗らない。
「もちろん、今からだよ。むしろこれくらいの時間の方が、お店も空いててゆっくり出来ると思うよ。料理だってそんなに時間かからずに出てくるだろうし」
「……家だったら年中ゆっくり出来るし、カップ麺なら三分待てば食べられる」
支度する時間に移動時間も加味すれば、確実に家で食べた方が早い。たとえそれがカップラーメンであったとしても。
「そんなこと言わないでさ。せっかくのお休みなんだし、外ランチしに行こうよ」
「せっかくのお休みなんだから、家でのんびりだらだらさせろ」
夏歩の声など聞こえなかったかのようにスタスタとキッチンから離れた津田は、何の躊躇いもなくクローゼットを開けて、中を物色し始める。
「あっ、ほら、これなんかいいんじゃない。上から被るだけだから、着替えも楽だよ」
そう言って津田がハンガーごと取り出したのは、深いブルーのシックで大人っぽいワンピース。一目惚れして買ったはいいが、まだ一度も着たことがないものだった。



