なるほどそれであの時間かと納得したら、続けてなぜ嘘でももっとマシな用事を言わなかったのかと後悔する。


「さて、じゃあ何を食べようか。なっちゃんは、何が食べたい?」


雑誌を持ったまま立ち上がった津田は、そのままキッチンへと歩いていく。

しばらくその後ろ姿を不満げに眺めていた夏歩だが、夢中になっていたものがなくなると途端に体が空腹を訴え始めたので、ひとまず残っていたココアを飲み干して、津田のあとを追うように立ち上がる。

近づいてきた夏歩を見て、津田はもう一度「何食べる?」と問いかけた。

答える代わりにレンジ台の方を向いてしゃがみ込んだ夏歩は、目の前の棚を開けて、中を物色する。

既に津田の城となりつつあるキッチンには、夏歩には覚えのないものが溢れていて、レンジ台の棚も例に漏れず、乾麺やら湯煎するスパゲティソースやら、ホールトマトやコーンの缶詰なんかが幅を利かせている。

それらを避けて探っていると、奥の方に追いやられた哀れなカップラーメンを発掘した。
ラインナップとしては、激辛ワンタン、シーフードチーズ、トマト焼きそばの三つ。