「そのうちお給料上げるんで、お願いしますね!」
『それはそれは、楽しみだわ』
彼女はにっこりと笑うと、ホールへ戻って行った。
そう、今日から新しく受注先が増えた。
といってもその会社はオフィス街にあり、その界隈には他のお客様もいる。
ルートで回れるため、時間的にも負担にならないという何とも理想的なものだった。
少しばかり経費はかさんだけれど、ネット広告に力を入れて正解だったのかもしれない。
全てのお弁当を真っ白なワゴン車に積み込むと、晴れやかな気持ちで車を発進させた。
オフィス街にあるコインパーキングに駐車すると、車を降りる。
配達ルートはあらかじめ組んであるため、ここからはスピード勝負だ。
一件目は早速、今回新規受注したお客様のところ。
その会社はこの界隈でも指折りの大企業だ。
とはいっても、その中の一つの課なので至って小規模。
けれどお弁当はあくまで店舗の広告兼、サイドワークだと割り切っている。
大規模の受注はお店の規模的にも難しいが、やはりランチ営業やお弁当は広告塔の役割も果たしてくれる。
もしかすると他の課からも声が掛かるかもしれない。
そうなればこちらとしてもかなり好条件である。
そんな事情もあり、今回の受注はちょっとした正念場ともいえる。