あの日のことは夢だったんだろうか。 そんなはずはないのに、いつもと全く変わらない彼の姿を見ていると 本当にそう思えてくるから不思議だ。 でも。 …なかったことになんてしたくない。 「この間の…エレベーターで言ってたこと…」 言いかけて言葉を止める。 最近の私はこんなことばっかり。 まるで自制が全く失われてしまったようだ。 少しの間。 目伏せて何かを考えると、彼は口を開いた。