しかし、彼はフォローのつもりだったのか知らないが、こんな話をしてくれた。
これがまたよく憶えてないのだが、いろんな偶然というものは大抵、数学の理論で証明されるものなんだとかなんとか。たとえば、親戚が死ぬ夢を見て、その数日後に本当にその親戚が亡くなると、それを「虫の知らせ」だったんだと人は思う。
 けれども虫の知らせというのも、数学の数式で簡単に解けるというのだ。その数式によれば、親戚が亡くなる直前に知り合いが現実と同様の夢を見ると言うのは、さしてすごい事ではないことが証明されるらしい。どんな数式だったかは全然憶えていない。
 「お前、会計学とってたよなぁ?あれでやったじゃん。」
と言われたのだが、全く記憶にないのである。というか会計学って財務とか、簿記とかのはずなのに、何でまた数学理論?
 まぁ、そういった何でも数学で解決というロマンの欠片もない考え方は好かないのだが、私の知り合いが一日に四人、私と似ている人を見てわざわざ連絡してくる確立を大した確立じゃないのかもな。んん・・・全然納得いかねぇぞ。

 しかし、ふと眠る前に気づいたのであるが、私の携帯が一日に四回も(しかも全部違う人から)鳴った確立の方が、ドッペルゲンガー四人よりも確立的に絶対低い、ということだ。用もないのにメールするほどマメじゃないし、用事の入ったメールでも平気で返事しない私だ。携帯が止まってもぜーんぜん困らない、という悲しい22歳だ。困るのは連絡がとれない周りの方なくらいで、しかも唯一私の携帯の存在理由になっている彼と一緒にいる今日、他者が私の携帯を四回鳴らした。二人目まではやはり返事も返していない私であるが、これは天文学的に偶然どころか奇跡なのではないか。

 そう思うと携帯代が馬鹿らしくなってきてしまった。ポケベルでいいよ、ポケベルで。世代じゃないけどさ。 あれ、もう売ってないのかしら。