正直、世菜の恋は実らないと、思う。


神田は最初から、ずっと佐々木のことが好きだ。


俺と佐々木が話していた時に、不機嫌そうな顔で現れたのがその証拠。



『由良くんの中に、私が入り込める隙はないって改めて実感しちゃって』



世菜だって、本当は分かってるはずなんだ。



……だけど、それでも世菜は自分の気持ちを伝えに行く。


世菜の口から、好きという言葉を向けられるのは、俺じゃない。



そんなのは──嫌だ。




「……司?」



無意識に、世菜の腕を掴んでいた。




……やっぱり俺は、大人じゃない。


世菜が自分のものになるのなら何だってしようと思ってた。