大和撫子物語

今日も厳しい指導をしてもらう。エレナは「また失敗か〜……」とため息をついた。

何度もお茶を点てているが、いつもどこかで失敗してしまうのだ。それは茶道に限らず、お花や書道でもだが……。

「そんなに焦ることないよ。大事なのは、お手前の手順が体に染み付くかどうかだから」

蛍はそう言って微笑むが、エレナは「少し風に当たってくる」と茶道部の部室を出た。ずっと正座をしていたため、足はビリビリと痺れている。

「私は大和撫子になれないのかしら……」

エレナはポケットから手鏡を取り出す。赤いハートの形の手鏡だ。そこに写っているのは、日本人離れした自分の顔。

エレナは苛立ち、手鏡を放り投げたくなる。自分の容姿を生まれて初めて憎く感じた。ハーフでは彼は振り向いてもらえないかもしれない。そんな不安があったのだ。

「小玉さん、こんなところでどうかされましたか？」

窓の外を見つめていたエレナは、ドキッと胸が高鳴っていくのを感じる。横を見れば時雨が本を手に立っていた。エレナはニコリと笑う。