大和撫子物語

「もちろん！」

こうして、エレナの特訓が始まったのだ。



その日から毎日のように、エレナは大和撫子になるための特訓をしている。今も、茶道家の娘の蛍に茶道を教えてもらっていた。

「茶道はやっていれば、美しい立ち振る舞いが身につくと思う。さあ、やってみて」

蛍に教えてもらったことを思い出しながら、エレナはお茶を点てていく。

底の抹茶を分散させるようにゆっくり混ぜ、次に茶筅を底から少し上げ、お湯が回らないようにして手首を前後にしっかり振る。泡が立ったら茶筅の先を泡の表面まで上げ、ゆっくり動かして泡を細かくする。最後に、中央に泡が盛り上がるように、静かに茶筅を上げる。

一生懸命エレナは点てる。時雨が飲んで「おいしいです」と微笑んでくれるように。心を込めて、日本に帰国するまでしたことのなかった茶道を覚えた。

出来上がったお茶を、蛍はゆっくりと飲む。その動作の一つも美しく、エレナは緊張しながらもドキッとした。

「う〜ん……。抹茶の泡がきめ細かくない。もう少し細かくしないと……」