「大丈夫か?まひろ」

「はい……。すみません主任」

迫田さんのお蔭で、いまこうして主任の車に揺られている私。
ありがたいことなんだけど……。

「うっ……」

吐き気が襲ってきた。
お酒飲むのなんて得意じゃないくせに、知らず知らずのうちにガンガン飲んでいたらしい。
酔っぱらうのも当然だ。

「気持ち悪いか?ちょっと休憩しよう。コンビニで停めるから」

迫田さんから呼び出されてきっと驚いたはずだけど、まだ何も言わない主任。
今日の打ち上げは"女同士"だと思っていたはず。
知らなかったとはいえ、嘘ついてたみたいでちょっと後ろめたい。
だけど……気まずさを感じてしまうのは、そのせいだけではないよね。

コンビニの駐車場に車が停まると、吐き気が和らいだ気がしてちょっと気分も落ち着いた。

「飲み物買って来るけど、欲しいものあるか?」

「いいえ、今は何も欲しくありません……」

「わかった。すぐ戻って来るから」


主任に初めて抱かれた夜の事を思い出した。
あの日もコンビニの駐車場で待たされてたな……。

今日は何を買いに行ったのかな?
また遅くない?なにしてるんだろう。
今日はなんだか家にこのまま帰りたくないな……。
素直に私の気持ちをぶつけてもいいのだろうか。

アレは夢だから。
心配になってた事がそのまま夢に出てきただけよ。
そうでしょ?そうに決まってるよ。

「悪いな待たせた。お茶とカフェオレ買って来たけど、飲むか?」

「……カフェオレをいただきます」

主任はカフェオレなんて飲まないでしょ。
欲しくないって言ったのにちゃんと私のために買って来てくれるんだから。

喉に浸みわたるこの甘さは、主任の甘さ。
今日はどうしてこんなに私を甘やかすの?主任。

「ちょっとは落ち着いたようだな。まだ気分はすぐれないか?」

ちょっと前まで気持ち悪かったのが嘘みたいに吐き気もなくなってる。
主任の優しさとカフェオレのおかげかな。