女の人の声だ。
"密会スポット"という言葉が頭に浮かんで消えない。
いままさにこの場所で誰かと誰かが密会中ってことなの?

「おい、声抑えろよ。もし誰かがやって来たらどうするんだ。……いやって言いながらもこんなに濡らして。ほら、どうして欲しい?」

小声だけどはっきりと聞こえた男の人の声には、聞き覚えがあった。
でも違うって言って欲しい。
似てるだけなのかもしれないし。

「お、お願い……指だけじゃいや。…………舐めて」

「分かった。気が済むまで舐め回してやるよ……夕梨」

もしかして『夕梨』って、高柳さんなの?
私の膝がガクガクと震えるのが分かった。
その場にヘナヘナとしゃがみこみ、これ以上聞きたくないと耳を塞ごうとしたその瞬間に聞いてしまった。

「あっ……ああ……いいわ。もっとして……翔」

やっぱり、密会してるのは高柳さんと、佐伯主任だ………。

いやっ!
いやだいやだいやだいやだ!!

頭がガンガンと割れるように痛む。
ああ、誰か、助けて………!!












「…………蘭さん、蘭さん起きて!おい!蘭さんってば!!」

パチっ。
ギュッと閉じていた目を開けてみると、迫田さんが心配そうに私の顔を窺っていた。

あ、あれ?ここ何処?

「よかった!ずいぶんうなされてたようだけど大丈夫?」

あ、飲み会だったんだっけ。
っていう事は私ってば、酔っ払って眠ってしまった挙句、夢見ていたってこと?

「あ、池田さんと朝川さんは?」

「先に帰したよ。ってかまだ飲み足りないとか言ってたし、2人でハシゴしてるんじゃないかな」

じゃあ迫田さんは私のおもりしてくれてたんだ。

「ありがとう迫田さん。私ならもう大丈夫……」

ふっと息を吐いて、半分呆れたように私を見た迫田さんが言った。

「佐伯先輩を呼んどいた。もうすぐ来るはずだから、先輩に蘭さんを引き渡したら俺も帰るよ」

え、佐伯主任が来るの……。