あ、ああ。
その話がどうして今出てくるの?

「母から父に連絡してもらいました。父は今、長期出張で北国に行ってるらしいです。来月中には一度こっちに戻るとか。イチにぃと菜津美の結婚式にも出席するって言うので、もしかしたらその時に時間取れるかもしれないと……」

話し合いの日程が決まったら早目に連絡しろよ。こっちの都合もあるし。俺としてはなるべく早い方が助かるけど」

「もしかして主任も話し合いに立ち会ってくれるんですか?」

「当たり前だろ!俺にとっても重要な話し合いの場に居なくてどうするんだ。なんせ俺たちの未来計画がかかって……」

イチにぃと菜津美が興味津々といった風に、ニマニマしながら見ているのに気付いた主任。
途中で言葉を切って気まずそうにコホンと咳払いをした。

「とにかく、まひろはまだ営業での人事交流期間中なんだから、気を抜くなよ」

「そうだな、今回の"K作戦"は長引くかも知れないから、油断大敵だ。向こうが何をどう仕掛けてくるかも予想できない。とにかく、翔と菜津美は分かってるだろうけど俺たちの作戦は"相手のフィールドで"が鉄則だから」

"K作戦"?
"相手のフィールドで"!?
なんだか私だけ話についていけてない気がする。

「イチにぃ、"K作戦"もいいけど、もう準備はバッチリなの?式まであと1ヵ月でしょ」

来月末にはイチにぃと菜津美の結婚式がある。

「ああ何の問題も無いよ。今日もこの後、菜津美の実家に行ってちょっと打ち合わせするし。それよりもまひろ、お前の方は大丈夫なんだろうな?」

ぐっ……墓穴掘った。
実は私は菜津美から、新婦の友人代表としてスピーチを頼まれているのだった。

「まひろのスピーチ楽しみにしてるからね!当日会場が騒がしくて聞こえなかったら困るから、司会の人に『どうしてもまひろのスピーチは一言一句もらさないようにしっかり聞きたい』ってお願いしているの。だから、頑張ってね!!」

う……。
余計なプレッシャー与えないでよ菜津美。

「ああ、スピーチの事考えたら胃が痛くなってきた……。今夜のメニューは雑炊かな……」

今日は私のシフトで、主任も当然のように食事のメンバーに入っているのだった。
もうレギュラーと言っても過言ではない、かも。

「OK。じゃあ"かに雑炊"で決まりだな。俺も作るの手伝ってやるから、食材の買い出しに行こうぜ!」

「翔、お前ノリノリだなぁ……」