はっ!!
トラップに引っかかってしまった!?

「まあいいか。情報の出所はだいたい見当ついてるし。それにしても、宮本さんだけじゃなくて上村女史も一緒だったとは。そのツーショットだけでも収穫アリだな。君にとってはショックだっただろうけどね」

「私がですか?」

首を捻ってみせたけど、課長は納得してないようだった。
私を見ている目つきが澱んで見えるのは、お酒が入っているからだけじゃない、はず。

「こんな場所で2人連れで、ただ食事しにきただけっていうのは通らないんだよ。ここは大人の忍び宿……。つまり訳ありなんだよ、ここに来る人たちは皆そうさ」

イチにぃが、上村課長と訳あり?
そんなことって……信じられない!!

「俺たちだって、そう思われてるよ。あの2人にはね。俺だってもちろんそのつもりでここに君を連れてきたんだし……ね」


…………ちょっと待って!

「今日は、君を帰すつもりはないよ。宮本さんたちだって、今頃楽しんで……」

「小久保課長、失礼します!!」

……私ではない、誰かが部屋の外から呼びかけてきたのだ。
スーッと引き戸が開けられた。

「……宮本さん?噂をすればなんとやらってヤツですか」

イチにぃ!!でもどうしてここへ?
上村課長はどうしたんだろう。
イチにぃ1人だけみたいだけど。

「あの、あまりここで詳しく説明している時間はないので簡潔に。私と蘭さんは実は親類関係でして、先程私の母から連絡が入ったんです。蘭さんのお母さんが……倒れたと」

な、なんですって?
お母さんが……倒れた!?

「それ、本当なの?イチにぃ!!」

「ですから、蘭さんを私が付き添って病院に連れて行きたいんですが、構いませんか?緊急事態ですので、ここで失礼させていただきます。申し訳ありません、小久保課長」

「……そうですか、それは大変ですね。早く連れて行ってあげてください。蘭さん、宮本さんと早く病院に向かいなさい」





「ねえ!イチにぃ、お母さんはどうしたの?倒れたって一体……」

「悪い。叔母さんは無事だ。どうもしてないよ。嘘吐いて悪かったまひろ」

嘘?嘘だったの?
じゃあお母さんは元気なんだね?

「よ、良かった嘘で……。でもどうして嘘なんか」

「バカ野郎!!お前は本当に隙だらけだな。今日の事、翔には言ったのか!?」

あ!電話もメールもし損ねてたんだった。