「そうだな……。当たらずとも遠からずってとこかな。さすがにここまで上手くいくなんて思ってなかったよ。宮本さんが今夜あたり来るような予感だけはあったけど、それも絶対ではなかったし」

……未必の故意ってやつだ。

「だけどなぜ私を?」

さっきまでの飄々とした表情から真顔になって、箸を置いた課長。
私に射るような視線を投げかける。

「ばっちりメイクの下には、どんな素顔を隠しているのかな。その仮面を剥ぎ取って素顔を曝したくなるよ。君から言わないつもりなら、俺から言ってもいいんだね」

「……何を、ですか?」

「宮本課長と蘭さんって……訳ありなんだろう?」

……………………は?
"訳あり"ですって!?
私とイチにぃが?
ちょっと、意味が解らないんですけど……。

あんまりにも的外れなことを真剣な表情で告げられ、ポカンとしてしまった私。
しかもドヤ顔で『してやったり』とでも言いたいようにニヤニヤしている課長。

「宮本課長はもうすぐ結婚するんですよ。私の親友と。小久保課長もご存知ですよね」

「ああもちろん知ってるよ。そっか、相手の有田さんって、蘭さんの親友だったんだ。似てるなやっぱり」

似てるって、私と菜津美が?
私の事をよく知らない人にまでそんなこと言われるなんて。

「そうですか、私と有田さんって似てますか?」

何が可笑しかったのか、プッと吹き出して堪えきれなくなったように笑い出した課長。

「あっはっはっはっは……。面白いね蘭さんって。君と有田さんが似てるだなんて思った事もないよ。見た目も性格も全然違うじゃないか。俺が言いたいのはね、君たちの関係と俺たちの関係が似てるって言ったんだよ」

「どういう意味ですか?よく分からないんですが」

「宮本さんと蘭さん、俺と夕梨。似たようなもんじゃないかって思ってね」

どうして?課長と高柳さんは不倫関係。
イチにぃと私は、いとこ同士っていうだけよ。
全然似ても似つかないと思うんだけど。

「ふーん。なにも聞き返してこないってことは、知ってるんだね。俺と高柳夕梨の関係を。営業1課の人間は知らないはずなのに、どうして蘭さんは知っているのかな?」