──8月7日。

週末を経て月曜日。
あの怪文書から1週間経過。

先週の内に決着すると思われた"K作戦"だったが、どういう訳か未だ動きがない。
これも作戦の内か?
それとも単にアッチがトラブってるだけなのか。

「一弥さんは今日も早く出社するんでしょ。私は普通通りに行っていいの?」

菜津美が心配そうに俺に確認してきた。
俺がまひろとただならぬ関係っていう怪文書のせいで、俺に愛想を尽かし実家に帰っていたという設定のせいだろう。
とっくに解決してるはずが、そうはいかず出勤するのが億劫だとみえる。

「油断ならないからな。あらゆる事態に対処できるように備える必要がある。噂のことなら1週間も経ってるから、大丈夫だろ」

「でも私!怒って実家に帰ってたってことになってるし。絶対にいろいろ突っ込まれるよ!」

まあ、そうかもしれないけど……。

「逆に気を遣ってその話題に触れないでおいてくれるかもしれないぞ。念のために言っとくけど、決着をみるまでは会社でまひろと会うの禁止な。念には念をいれておかないと」

──16:00

今日も何事もなく終わるのかと思い始めた頃、俺の携帯にメールが。
相手方に潜入中の先輩から『決行は1時間後。あとは頼む』と。
週末を挟んで油断させたつもりだろうが、こっちも油断してる振りだって気が付いていないのか。

1時間後か、のんびりしてられそうにないな。
早速仕上げに取り掛かるとするか。

「佐伯、ちょっと頼みたい仕事がある。一緒に来てくれ」

翔を連れ出し、役員フロアへと乗り込む。
いよいよ決着の時が迫ってくる緊迫感と共に。

「宮本課長、一体どこに……」

「シッ!事情は後で詳しく。とにかく、こっちだ」

やって来たのは崎山本部長の部屋。
部長はいま席を外しているため不在だ。

「部長はいないんですね。勝手に入って大丈夫ですか……っていうか、ここで俺は何をすればいいんですか?きちんと説明してもらえませんか」

困惑気味の翔に手短に極秘任務の内容を告げる。