「もしもし。おおそうか、待ってろ迎えに行く。すぐだから、じゃあとで」

さっさと通話を終えると、直ぐに立ち上がった龍崎さん。

「すぐそこまで来てるみたいだから、連れてくるよ。ちょっと待ってて」

言いながらもう玄関に向かっている龍崎さんの背中をただ見送るしかなかった私たち。

「私の携帯番号を知ってるんだから、会ったことある人ってことだよね。誰なんだろう……」

「俺たちにもう一度会いたいって言っただろう?俺もまひろも会ったことがあるんだろうな。まったく見当もつかないが……」

今まで黙って私たちの話を聞いていた吉田先生が、立ちあがって部屋を出て行こうとする。

「父さん……どこ行くんだ?」

「ちょっと買物に出て来る。今日は貴浩くんたちも一緒に食事したらいいじゃないか。賑やかになりそうだな。なあ、まひろさん」

「え?ええ、そうですね……」

思わず同意したものの、ちょっと違和感を感じた。

…………賑やか?
貴浩くん、たち?

吉田先生が家を出たあと、少ししてから玄関のチャイムが鳴った。

「はーい」

龍崎さんが戻ってきたんだろう。
そう思って玄関のドアを開けた私は、予想外の人の姿を目にして驚いてしまった。

「どうも、ご無沙汰しています。……蘭さん」

「あ、あなたは!田中花子さん!!」

「おねえちゃん、こんにちは!」

「サッチン!!」

なぜか田中花子さんと娘さんが、そこに立っていた。
私と翔真が初めてのデートで遊園地に行ったとき、メリーゴーランドで出会った花子さんとサッチン。

「いいねそのリアクション。翔真も驚くだろうな!どうしてこの2人を俺が連れてきたのか不思議だろう?とりあえず中で話をさせてもらってもいいかな」

はっ、私ったら驚きのあまり立ち話を。

「す、すみません。どうぞお上がりください。サッちゃん久しぶりだね。元気だった?」

「うん!おねえちゃんにまたあえてうれしい!!」

翔真もビックリするだろうな。
龍崎さんに話を聞かせてもらわないと。