しかしどうしてこの女性がこの場に?
従妹だと言われても、今まで接点もなかったし。
佐伯の親戚とは無縁だったからな。
それなのに今更……。

「あの、伯母さま。今日は一体どうして私を?」

祥平を見ても神妙な顔しているし。
母さんの一存で呼ばれたらしいな、サッチン。

「前々から考えていたのよ。翔真にサチさんを会わせたいって。お見合いなんて堅苦しいのじゃないから、気楽にしていいのよ。これが切っ掛けになって、お付き合いが上手くいってくれたらって……。やっぱりこうして一緒にいるところを見るとお似合いだと思わない?ねえ、祥平。翔真とサチさん……。真剣に将来のことについて考えてみてくれないかしら?」

…………は?

「悪いけど、結婚する相手は自分で決めるから。もう婚約してるし」

「な、なんですって翔真!聞いていないわよ!」

母さんが驚いたような大声を上げた。
そりゃそうだろ、言ってないんだから。

「本当は一緒に連れてきたかったんだけど、今日はそういう話じゃない……。祥平!話が違うじゃないか」

サッチンもどうしていいか分からない様子でオロオロしているし。
彼女も何も詳しいことを聞いていなかったとみえる。

「いや、ごめん兄さん。俺もおかしいなとは思ったんだけどさ。サチは"S・Factory"の社員だから、従妹でもあるし紹介するつもりなんだろうって……」

祥平も困惑してる様子だから、嘘ではないんだろう。

「母さん、この際だからハッキリ言わせてもらう。俺は"S・Factory"の経営に関わるつもりはない。今までもずっと経営のことについては断ってきたつもりだけど、納得してないようだから。俺はシャイニングを辞めるつもりないんで。以上」

「ちょっと翔真!それじゃちっとも話し合いにならないじゃないの。貴方は佐伯家の長男なのよ。そりゃずっと離れて暮らしてきたけれど、亡くなった佐伯も貴方のことをずっと気にかけていたの。父親らしいことなんてしてやれてないけど、佐伯家の……自分の息子として十分な物を残してやりたいって。それが"S・Factory"のことだったのよきっと……」