「まひろに佐伯くんも、今日はこういう場を設けてくれてありがとう。明日は一弥くんの結婚式だね。私まで招待してもらって恐縮しているところだが、精一杯お祝いさせてもらいたいと思ってるよ。まひろ、お母さんは?」

「はいはいちゃんと居ますよ。先ずはお茶でも飲んでから、リラックスしましょ」

先ずは一服……。
みんなそれぞれ温かい日本茶を飲んで、ゆったりしたところで話を切り出した。

「佐伯主任から話を聞きました。私が出張中にこんな風に話し合いをしたと。実は私もその出張中に、ある人から話を聞かされたんです。邦都市で」

"ある人"とは、麗花さん。
大門ではなく蘭でもなくなったということは、もう『本宮麗花』さんになっているんだろうか?
佐伯主任から聞いた話と麗花さんから聞いた話は、ほぼ同じだった。

「お母さんたちが離婚した経緯や、お父さんの再婚のこともきちんと私なりに理解したつもりです」

「邦都市、ということは麗花さんかな。彼女は今、本宮総合病院の先生と一緒に居るんだろう。そうか、そんなことが」

お父さんも本宮先生のこと知っているんだ。
それじゃもう本当に離婚問題もすっかり解決済みなのね。

「誤解もあったし、それを認めようともしなかったことも分かりました。頑なに拒否してきて、本当に申し訳ないと思ってます。まだ子供だったから……なんて、言い訳にしかならないけど」

言い終えてから、初めて真っ直ぐに父の顔を見た。
今まで会うことはあっても、目を合わせることなんてできなかったんだけど。
何年か振りにじっくりとみた父の顔は、当たり前だけど歳を取ったなと感じる。
だけど、昔と変わらず優しい眼差しを向けられていた。

「まひろ、大人になったな。おまえが申し訳なく思う必要はないんだ。私の方こそ謝らなければ。まひろを苦しめ傷付けたこと、本当に取り返しのつかないことだったと後悔した。悪かった……この通りだ」