だからか、梨那の表情は完璧。


今までだって、誰にも見抜かれたことはない。


でも、俺…いや、俺たちには分かるんだよ。

梨那が表情を作ってること、そして心を閉ざしていることに。


最近になって、顔は、前よりも作らない自然表情になってきたと思う。

俺たちの前じゃなくても。


だけど、必要以上に他人に関わろうとはしないし、本当の自分は絶対に見せない。


“アレ”は、断じて梨那のせいなんかじゃない。


だけど、当時小学5年生だった梨那には、立て続けに起きたアレらの出来事は、当然受け入れられるものではなかった。


いくら梨那が、年の割には大人びていたとしても。


俺や快斗でさえも、当時の出来事は、深い傷となって、心に焼き付いている。


あの時のことを忘れなかった日なんて、一度もない。