「ここは、明清時代の皇帝が、毎年天地の神を祀り豊作を祈った場所として知られてるんだ」

そんな解説を受けながら天音は観光をする。中国は国自体がとても広いためか、場所によって人々や街の雰囲気が大きく異なる。

その日、天音たちは万里の長城を訪れていた。異民族が侵攻してくるのを迎撃するために建設された城壁の遺跡である。

「ずっと来たかったんだ!万里の長城!!」

そう言い、柊と光樹ははしゃぎながらスマホで写真を撮る。天音は写真は撮らず、景色をじっと眺めていた。

人気の観光地とあって、万里の長城には多くの観光客が訪れて賑わっている。その中に天音は困っている表情の女の子を見つけた。赤いチャイナドレスを着て、ツインお団子の髪をした可愛らしい女の子だ。

女の子は地面を見つめ、何かを探しているようだ。天音は迷わず女の子に近づき、声をかける。

「ニーゼンムァラ?(どうしたんですか?)」

天音は勉強した中国語を思い出し、声をかける。女の子は数秒じっと天音を見つめた後、「救世主ある〜!!」と日本語で言い、天音に抱きついてきた。