殺す少女と堕ちる男達 2

それから数十分、逡巡しながらも何とか選び抜いたのは、黒い長財布。と、大分オーソドックスな物になった。

そして神谷さんが選んたものは、ネイビーな皮の手袋だ。こちらもオーソドックスだ。

『……んじゃ、私は帰るな』

「……まて」

大量の荷物を持って出口へと足を向けると、神谷さんに呼び止められた。

「………ありがとな」

そう言って神谷さんは、またもや優しく微笑んだ。どこの誰がこの人を見て、関東一の組の若頭だと思うのか。1000人いたとしても、誰一人として思わないだろう。息子のプレゼントを四苦八苦しながら選ぶ、優しい普通のお父さんだ。

『………あぁ。じゃあな』

そして今度こそ、踵を返して出口へと向かった。