実に楽しそうに美鈴の様子を横目で観察しながら、リオネルは燭台に火を入れた。

 紫がかったダークブラウンの木製家具にあわせて落ち着いた色調でまとめられた部屋で、灯りを増した分ドレスたちがまるで浮き上がるように、より鮮やかにその存在を主張しているようだった。

 またしても、つい周囲に目を奪われてしまった美鈴の背後にそっとリオネルが忍び寄る。

 長椅子の背もたれに両手をついて上半身を折り曲げ、背後から覗き込むように美鈴の顔のすぐ横まで頭を下げた。

 すぐ横にリオネルの吐息を感じて美鈴は思わず長椅子の上で身をよじり、背後を振り返った。

「君の好きな紅茶を淹れてくる。ジャネットほど上手くは淹れられないと思うが。……まあ、寛いでいてくれ」

 そう言い残すと、踵を返してリオネルは奥の部屋へと消えていってしまった。

 一人、部屋に残された美鈴はただ座っているのも落ち着かず、長椅子から立ち上がって部屋をぐるりと見渡してみる。

 袖とスカートの裾がふんわりと膨らんだミントグリーンの外出着

 幾重ものフリルやチュールを裾にあしらった波立つ海のような青いドレス

 スカートの裾を彩る薄ピンクの横ストライプがアクセントの真っ白なドレス

 ――いったい、どうしてこんなにも多くのドレスが男の一人住まいに陳列されているのだろう?