リオネルはそんな風に言っていたけれど、それならば改めて昼間に部屋に招待すればいいことだと思う。

 わざわざ舞踏会の直後、しかも深夜に彼の部屋に寄る必要はないはずだ。

 美鈴にはリオネルが思惑がさっぱり読めなかった。

 同時にリオネルに寄せかけた信頼が少しずつ薄れていくように感じられて何故だか切ない。

「……ここだ」

 3階の一室の前に辿り着くとリオネルが身を屈めて美鈴の耳元で囁いた。

「……」

 何も言わずに美鈴は冷ややかな瞳でリオネルを見上げる。

 冷たい視線を浴びせられながらもリオネルは全く意に介さない様子で微笑みさえ浮かべて美鈴を見下ろしている。

 グリーンの瞳が蝋燭の火を映して燃えるような輝きを宿していた。

 ――深夜に人を呼びつけておいてその堂々とした態度はいったいなんなのだろう。

 美鈴は直ぐに目を逸らし無表情に正面のドアを見つめた。