円舞曲の終わりに、最後のターンを鮮やかに舞い終えた美鈴は、リオネルの(たくま)しい腕にしっかと抱きとめられた。

 心臓が苦しいほどに高鳴っているのは、ダンスのせいなのか、それともこうしてリオネルに抱きしめられながら荒い息を吐いているせいなのか……。

 未だかつて経験したことのない感覚に、美鈴の頭はジンと(しび)れ、言葉さえ上手く紡ぎだせない。

 ダンスが終わって数分、呼吸を整えきれず(うつむ)いていた美鈴がやっとのことでリオネルを見上げると、彼は満ち足りた微笑みを浮かべながら美鈴の瞳を見つめ返した。

「ほら……言った通りだろう? 『君は、社交界の華になれる』……と」

「……え?」

 戸惑う美鈴の肩を右手で軽く抱き、まるで舞台の上の役者がするように、リオネルは胸を張って左腕を広げてみせた。

 まるでそれが合図であったかのように、舞踏会に参加している紳士たちが続々と美鈴とリオネルの元に駆けつけてくる。

「ご令嬢、素晴らしいダンスでした!」

「初めてお見かけいたしましたが……ご挨拶をさせていただいても……?」

「リオネル、今日もまた、美しい令嬢を連れて……!ぜひ、僕にも挨拶をさせてくれ」

 わらわらと二人に群がる紳士たちに向かい、リオネルは片手を優雅にひらめかせて一同を制止する。