「……やっぱり、君には深みのあるバラ色がよく似合う。初めて君を見た時から、君の肌には絶対にその色が似合うと思っていた」

 自らが見立てたドレスに身を包んだ美鈴を惚れ惚れと眺めながらリオネルが呟いた。

 美鈴が今、着用しているデコルテの大部分と胸元を強調したアンティークローズのドレスの袖部分は、パフスリーブ状に丸く大きく膨らみ、胸元と同様に繊細な飾りレースで縁どられている。

 コルセットで細く整えられた腰部分は同色の布の飾りベルトで彩られ、ドレープによって布地の光沢が引きたてられたドレスの裾には、ドレスよりほんの少し濃い色の糸で刺繍された花柄の装飾付きの布地が三重、重ねられている。

「初めてって……わたしが、ルクリュ家の庭に倒れていた時のこと……?」

 リオネルが口を開くまで、羞じらいから(うつむ)いていた美鈴が、驚いたように顔を上げて彼の方を向いた。

 彼女が顔を上げた瞬間、プラチナの繊細なチェーンに赤い宝石をあしらった首飾りに合わせて、赤石とダイヤのような透明感のある宝石を交互にちりばめた、長さのあるイヤリングがゆっくりと振り子のように揺れて(きら)めいた。

 その光景を目を細めて見つめながら、リオネルはゆっくりとした口調で美鈴の問いに答える。

「ああ、あの日……緑の芝草の上で、君を初めて見た時……」

 夜の街を通り抜ける馬車の中、街灯の光を受けてリオネルの、今は昼間よりも暗く見えるヘーゼルグリーンの瞳が光った。

「……あの時、君は、中々面白い服装をしていたな……。今までに見たことのないデザイン……やはり君はどこか遠い、異国から来た人間なのかもしれないな」