既に髪を結い上げ、オールドローズの夜会服やネックレスはもちろん、白い手袋を身に着けた美鈴は、リオネルの言う「仕上げ」が一体何なのか、皆目見当もつかなかった。

「そうだな……、君は、化粧台の前に座って、目を閉じていてくれるだけでいい。後は全て俺に任せてくれ」

……化粧台の前に座って、目を閉じる……

リオネルの企みの意図が全く読めず、躊躇しながらも美鈴はコクリと頷くと、リオネルの言うまま、鏡のついた化粧台の前の椅子に腰かけて目を瞑った。

コトン、と化粧台に何か軽いものが置かれる音と、サラサラと、木々の葉が風にあおられて舞うような音がかすかに聞こえてくる。

「少し、髪に触れるぞ……そのまま、動かないで」

美鈴の頭のすぐ後ろに、リオネルの息遣いと先ほどと同じく木々の梢が触れ合うような音が聞こえてくる、と同時に、そっとリオネルの大きな手が美鈴の髪に触れた。

その瞬間、美鈴の心臓が跳ね上がり、鼓動がだんだんと早くなっていく。

すぐ後ろに立つリオネルに、もしかしたら勘づかれてしまうかもしれないと心配になるほど、髪に触れられるたび、美鈴の鼓動は早く激しくなっていく。

……一体、何をしているの……?

早く時が過ぎてくれるよう念じながら、美鈴はリオネルのいう「仕上げ」が終わるのを、今か今かと待ち続けた。

繊細な手つきで美鈴の髪に触れていたリオネルの手がやっと離れた、と同時に、美鈴の耳元にリオネルの息がかかる。

「これで、今夜の衣装は完成だ。……ミレイ、目を開けてくれ」