「ミレイ、君が俺をどんな風に思っているか、俺には大体想像がついてる」

 両手を頭の後ろに組んで背もたれに身を預けた姿勢のまま、わざとだろうか、リオネルは美鈴の方を見ずにそう言った。

 いつもは張りのある声でハキハキと話すリオネルの声が今日はなぜかゆったりと優しい。

「『綺麗な女なら見境なく声をかけて口説きまわる、軽薄で好色な男』……とでも思っているんだろう?」

 低く落ち着いた声で、きわめて率直にリオネルは美鈴に「自分の印象」について問いかけると同時に、借りて来た猫のように大人しく隣に座っている彼女に視線を投げる。

 それはまさしく美鈴がリオネルに対してルクリュ邸での初対面の時から感じていたことそのものだったので、美鈴は思わずコクリと頷いてしまった。

「ハハッ……! 正直だな」

 いつもは取り澄ましている美鈴が、あどけない少女のように素直な反応をしたのがよほど可笑しかったのか、リオネルは愉快そうに笑い声を立てた。

「ま、俺にはそんな面が無きにしもあらず……とは言えるな。俺は、君のような美しい淑女(レディ)が好きで、いつでもその力になりたいと思っているような男だからな」

 冗談交じりにやや自嘲気味な自己評価を下した後、リオネルはふと真剣な瞳で美鈴を見つめた。

「ただ、……俺は、単純に君と親しくなりたい。君のことを知りたいと思っている。今回森に誘った理由はたったそれだけだ」

 寛いだ姿勢のまま、視線を再び美鈴から外すと、目を閉じてリオネルは続けた。

「何せ、あの日一番最初に君を見つけたのは、俺だ。俺には君をもっとよく知る権利がある」

「……何だか取って付けた理由のように聞こえるわ、わたしには」

 ……わたしは、「早い者勝ち」のバーゲン品か何かか……心の中でため息をつきながら、美鈴は思わず口を挟んだ。