「……?」

「……失礼、少々驚いたもので」

 ゆっくりとこちらを振り返ったフェリクスの顔は冷静な表情を浮かべていたものの、頬はやはりうっすらと紅くなっている。

「す、すみません。驚かせてしまって……!」

 慌てて詫びようとする美鈴に対してフェリクスは軽く頭を振った。

「そういう意味では……。こんなところで、貴女に再び会うことになるなんて、思いもしなかった」

 フェリクスの透き通ったアイスブルーの瞳が美鈴をまっすぐに見つめている。

 湖面に反射する光を背に受けて、亜麻色の髪の輪郭が淡く光って見える。

 ――なんて……、美しい人なんだろう。

 思わず、彼に見惚れてしまいそうになった美鈴の耳に下草を踏みしだいてこちらに近づいてくる足音が聞こえてきた。

「おい、フェリクス! 待たせたな……」

 フェリクスの名を呼ぶ、明るく朗らかな声に振り返ると、そこにいたのは確かに見覚えのある琥珀色の瞳に栗色の巻き毛の背の高い男性……。

 大きなバスケットを携えたジュリアン・ド・ヴァンタールが驚いたような表情を浮かべてそこに立っていた。