……これまで、自分のことは全て自分で決めて来たのに。

 自分の最も苦手とする分野。

 恋愛、結婚――。

 今までひたすら避けて来たことが、異世界で最大の弱点になるなんて。

 それでも、フィリップとのお見合いはすでに決まったこと。

 選択肢はない、自分で決めたことなのだから……。

 美鈴は去っていくリオネルに背を向け、屋敷の中へ一歩踏み出した。

 休日までに用意することはまだ、たくさんある。

 グズグズと考えている暇なんか、ないんだから……。

 そう自分に言い聞かせながら。